2017.10.30

元ネタはエディ・マーフィ!?サイモン・ペッグ&ニック・フロストの黒人版!?『ゲット・アウト』の細かすぎて伝わらないオマージュを町山智浩が徹底解説!!

大ヒット上映中の『ゲット・アウト』公開を記念して、町山智浩さんのトークショーを実施いたしました。

pa290144

-----------------
『ゲット・アウト』公開記念トークショー概要
日時:10月29日(日)16:30の回上映終了後
場所:TOHOシネマズ シャンテ(SCREEN 1)
登壇者:町山智浩(映画評論家)
-----------------

<イベント動画>
※本動画には一部ネタバレが含まれております。

<イベントレポート>
※本レポートには一部ネタバレが含まれております。

上映終了後、町山さんが登壇すると大きな拍手が沸き起こりました。町山さんは「この映画は大変な大ヒットで、今年の映画で一番儲けた作品だ」と低い製作費に対して高い興行収入を叩き出し、大きな利益を上げたと本作を称賛。続けて「監督はコメディアンで、テレビドラマ版の『FARGO/ファーゴ』の第1シーズンでどうしようもない頭の悪いFBIコンビを演じていた、“キー&ピール”というお笑いコンビのジョーダン・ピール」と紹介し、「二人でやっていたテレビのコント番組を面白がって見ていたら、“それ面白がっているのは中学生だけだよ”と娘に言われたのがショックだった(笑)」と会場の笑いを誘いました。

また「1980年代にエディ・マーフィが『サタデー・ナイト・ライブ』でやっていた、黒人がいると白人は真面目にしているが、黒人がいなくなると一斉に悪口を言い始めるというギャグや、特殊メイクで白人に扮したギャグなどの影響を受けている」と指摘し、「人殺しがあった家で“ゲット・アウト”という霊の声が聞こえるのに住み続けて大変な目に合う『悪魔の棲む家』という映画があって、エディは“白人は本当に馬鹿だな、“ゲット・アウト”って言われたら出ていけばいいのに。黒人は迷信深いから出ていくぜ“というギャグをやっていて、それを基にジョーダン・ピールは映画に膨らませた」と本作の元ネタについて語りました。

そして「1940年代から1950年代に郊外の住宅地は黒人がいないことを暗に売りとして販売していて、ジョージ・クルーニーが監督した新作『Suburbicon』では白人住宅地に引っ越してきた黒人一家をタイマツで“ゲット・アウト”って追い出そうとする話なんだけど、本作はそれをひっくり返している。さらにもう一回捻っていて、本作の劇中で街に住んでいる人達がみんなおかしかったり、使用人の黒人が従順すぎたりするシーンは、アイラ・レヴィンという『ローズマリーの赤ちゃん』の原作者が書いた、『ステップフォードの妻たち』という映画のオマージュ。白人ばかりの高級住宅地の奥さん達が、超美人でものすごく従順で料理がうまくて巨乳(笑)なんだけど、実は奥さん達を殺してロボットに入れ替えていたっていう話。あとドン・シーゲルが監督した『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』の原作になっているジャック・フィニィの『盗まれた町』という、同じく郊外の中産階級の住宅地で、突然近所の人達が無表情な感情のない人になっているんだけど、実は宇宙生物によって作られたコピーと入れ替えられていたという話なども基にしているとジョーダン・ピールは言っている」といくつかの映画を参考にしていることを解説。

pa290200

さらに「監督がかなり映画マニアだから誰もわからないようなネタも入れ込んでいる」と町山さんが語ると会場から笑いが起こり、「冒頭の黒人が拉致されるシーンで、“Run Rabbit Run”という昔の音楽が流れているのは、ロブ・ゾンビ監督の『マーダー・ライド・ショー』という映画で、人間狩りをしながらこの歌を歌っているのをパロっている。あと同じく冒頭の道に迷った黒人が生垣に入り込んだみたいだと言うのは、『シャイニング』のラストシーンの生垣の迷路のこと」と細かすぎて伝わらないオタクっぽいネタを暴露し、「『宇宙人ポール』や『ワールズ・エンド』のサイモン・ペッグ&ニック・フロストの黒人版なんですよ」と説明。

その理由として「母が白人で父が黒人で、白人にも黒人にもつまはじきにされたことで、どこにも居場所が無かったことから、アニメや映画で育ちかなり詳しくなっている。だから白人でもあり、黒人でもある中間にいるものとして両方の文化をコメディのネタにしてきた」とジョーダン・ピールのルーツを語り、「オバマ大統領の時代に人種差別が終わったといわれたが、日常生活ではまだ残っていた。そこで作ったのがこの映画で、アメリカ公開の直前にトランプ大統領が当選したことで、やっぱり差別は隠れていたと確信した」とジョーダン・ピールが本作を製作したきっかけについて述べた。続けて「トランプ大統領になったことでラストシーンを変えた。それは現実に差別主義者が大統領になったのに、映画の中でも黒人が差別されるだけではあまりにも救いがないから、映画だけでも救いを与えたかったと監督は述べていた」と製作の裏側を語り、「日本だと細かいところで何だろう?と思うことが多いかもしれないけど、もうちょっと詳しい説明はパンフレットに書いたんで(笑)」とちゃっかり宣伝する一幕も。

最後に「彼はどオタクでこれからどんどん来ると思うよ!」とジョーダン・ピールの今後の活躍に期待を寄せたコメントをし、「You can get out right now!」と本作にぴったりな言葉でトークショーを締めくくり、会場は大きな拍手に包まれました。